世界の国際周期表年切手

 2019年は、メンデレーエフが元素の周期表の元祖を提案して150周年という事で、国連のユネスコで決議された国際周期表年です。 世界化学年程ではありませんが、世界各国からそれを祝しいろんな切手が計画されてます。 ここではそんな国際周期表年切手たちを紹介してみます。
付記 私も化学切手同好会の一員として切手周期表(うちのHPの切手周期表とは別物)を作り、国際周期表年2019特別展での巡回展示してます。国立科学博物館でも国際周期表年記念企画展「周期表の歴史と日本の元素研究」というタイトルで2019年12月17日(火)〜2020年1月19日(日)にも展示する事になりました!良かったら見に行って下さい!

スペイン国際周期表年
スペイン '19.01.17発行

アンドレス・マヌエル・デル・リオ
アンドレス・マヌエル・
デル・リオさん
ウロア
ウロアさん
  国際周期表年切手の一番バッターはスペインでした。

 周期表を背景にスペインに馴染み深い元素バナジウム(スペイン出身のメキシコの鉱物学者アンドレス・マヌエル・デル・リオにより発見。一時は撤回されるもセフストレーム(スウェーデン)により再発見される)タングステン(デルイヤール兄弟(スペイン)によって単離) ・白金(ヨーロッパに白金が広く知られるようになったのはウロア(スペイン)の著書での記述から。名前の由来もスペイン語の「小さな銀」を意味するplatina)にスポットライトを当てています。

 このような形で自国の成果を宣伝するのはいい手ですね。色調もあっさりしていていい感じ。



国際版ロゴマーク アルジェリアの場合
アルジェリア '19.01.05発行

 国際周期表年切手はスペインより先にアルジェリアが出してました。(^^;
 アルジェリアの国際周期表年切手は国際版のロゴを一部流用した物。(配色が違ってカラフルになってるけど) 早かった分ひねりも無いので今一つ面白みには欠けるが、やたらと切手は出してるくせに国際周期表年の切手は一枚も出さない極東の某島国よりは遥かにましである。



キルギスタン国際周期表年

キルギスタン '19.04.12発行

 定番のメンデレーエフと国際周期表年のロゴマーク(国際版)と共にメンデレビウム・亜鉛・ヘリウム・アルゴン・キセノン・カドミウムなどの各種元素記号と原子番号・原子量が配されており、好感の持てる一品となっております。


モルドバ国際周期表年
モルドバ '19.05.23発行

 何と言ってもこの切手のナイスな所は、周期表のパズル的な性質をルービックキューブで表現している点につきます。 こっそりニホニウム(Nh)も写っていますw



ハンガリー国際周期表年

ハンガリー '19.06.03発行

   周期表を背景に右にメンデレーエフの横顔、そして中央にはメンデレーエフが初めて周期律の着想を書いた草稿(Manuscript Draft)が配されております。
(詳しい情報はClassic Chemistryの当該ページをご参照)

なお、これ以外にも周期律のアイデアを確立したと言われる日付入りの原稿(草稿よりは後と思われる)というのも存在する。

化学切手同好会の稲垣様情報ありがとうございます


ブルガリア国際周期表年

ブルガリア '19.06.24発行

   郵趣でも紹介されたブルガリアの国際周期表年切手。メンデレーエフ様のご尊顔の上に一杯小さな文字が書かれていますが、これほぼほぼ元素記号です。
 (ニホニウムがどこにあるか探してみよう!)

 ちなみにメンデレーフの顔のトレードマークであるお髭は、面倒くさいから剃らなかっただけの無精髭です。でもここまで延ばせば立派なもの。



ポルトガル国際周期表年水素 ポルトガル国際周期表年メンデレーエフ
ポルトガル '19.7.24発行

   一方の切手は太陽・空・海・土などどこにでもある万物の根源の元素である水素を取り上げております。もう一方は周期表の立役者メンデレーエフとメンデレビウムをデザインしてます。

ここで疑問なのがそれぞれの切手に描かれている「N20g」「I20g」の表示。位置的には額面表示してそうな場所ですが、今のポルトガル切手の額面はユーロ表記のはず。NとIを窒素とヨウ素と解釈したとしても、それを取り上げる意味もよく分かりませんし、20gの意味がさらに分かりません。お分かりの方いらっしゃったら是非お教えください。<(_ _)>

 なお、ポルトガルはこの他にも周期表全部をシート地に描いた小型シートも同時発行しております。


ロシア国際周期表年切手でも加刷
ロシア '19.3.19発行

 メンデレーエフの祖国ロシアからも切手が出ました。と言っても2009年に発行した小型シート(生誕175周年?)に加刷しただけのもの。しかも15ルーブルだったものをを80ルーブルにしている。加刷しただけで65ルーブル儲かるのだから美味しい商売である。日本で買うと結構なお値段しました。

 メンデレーエフはロシアでは国葬が行われたぐらいの科学の英雄なのだから、きっと力を入れた切手がでるだろうと思ってたらコレである。ただし切手を入れたブックレットは妙に力を入れている。ってそこに金つぎこんだんかい!



スリランカ国際周期表年
スリランカ '19.10.06発行

 鉄板のメンデレーフと周期表の取り合わせです。周期表には元素記号以外にもいろいろ(多分、原子番号・原子量・元素名)書いてあるようですが、残念ながら印刷が高精細でないので、かろうじて元素記号が読めるだけ。残念!

 アクチノイド・ランタノイド系列の表記を真面目に全部入れ込もうとしたあおりを食ったようで(?)、2族と3族の並びがブチ切れてるのが特徴でもある。



自家製国際周期表年切手
日本 '19.10.01発行

 今回も日本郵政ガン無視されてしまいましたので、自分たち(化学切手同好会)でフレーム切手を作ってしまいました。 デザインは、外国は勿論日本郵政も絶対採用しないであろう周期表の覚え方水兵リーベ僕の船(H He Li Be B C N O F Ne)」を国際周期表年ロゴ(国内版)に配してみました。

 これからも使っていただけるように新郵便料金が適用された10月に作ってみました。



もるじぶIYPT:Tc+Sc+Ge もるじぶIYPT:Ga+Ge
モルジブ '19.10.20発行

 今回は出ないのかなぁと思ってたボッタクリ切手国家からの発行と思っていたらやっぱり来ました。常連のモルジブ、小型シートが二つも。でも今回は褒めてあげたい!

 ど定番のメンデレーエフは別としても、何が良いと言っても元素単体金属が取り上げてる所。鉱物切手は多数出ているけれども、天然で単体金属で産出している物は少ないので今まで取り上げられてこなかった代物。 切手1枚の方にはガリウムでシート地にはゲルマニウム、切手4枚の方はテクネチウム・スカンジウム・ゲルマニウムというラインナップ。 International Year of Perodical Tableも出来るだけ元素記号で表現しようとしています。(ここら辺は、以前ソ連から発行された第20回IUPACモスクワ会議切手を意識している模様) 背景にはこそっと公式や分子構造式が描かれているのも味があってマニア心をくすぐります。



とーごIYPT:マンネリ気味 トーゴIYPT:Cu+Tc+P
トーゴ '19.11.05発行

 もう一軒ありました。トーゴです。切手一枚入りの小型シートは鉄板の周期表にシート地にはメンデレーフに酸素原子。切手下にある蛇足の分子モデルもどきはさすがのパチモン感満載です。

 しかし、切手4枚組の小型シートには見るべきものがあります。テクネチウムの結晶を取り上げているのはモルジブでもありましたが、ポイントはリン(P)の切手。そこにいるおっちゃんはリンの発見者である17世紀の錬金術師ニッヒ・ブラントです。  当然当時は写真がある訳ないので、18世紀のイギリスの画家ジョセフ・ライトの絵画「賢者の石を探す錬金術師」からおっちゃんの部分だけ引用されており、その事も明記されています。ただし原典の絵とは左右反転になってるのは謎である。

 ニッヒ・ブラントのリン発見の話は面白いですが、元素周期表のリン(P)ネタに回そうと思います。公開しました



柔らかい周期表
北マケドニア '19.10.09発行

 さて、最後にご紹介するのはこの切手。(コロナ禍で世界的に流通が滞ったためオーダーして入手するまで約100日かかりました)  デザインは、今まで見た事の無い柔軟な仕上がりになっております。と思ったら、原点は1976年にW.F. Sheehanにより提唱された物("Periodic Table of Elements with Emphasis" Chemistry, vol.49. pp17-18 (1976)) と結構古い物で、今世紀に入って再注目されている周期表です。これは地球に豊富にある元素程大きく描くという理念で描かれたおりますが、厳密には存在量に比例していませんので要注意です。

 切手の方は画像も粗いし背景色の説明も無いので、どうやらヨーロッパ化学会の周期表を周期表の部分だけパチって来たようです。

今後100年以内に深刻な枯渇が懸念される
使用量が増えると枯渇が懸念される
入手が限られており将来の供給に不安がある
十分な供給がある
合成元素
紛争を引き起こした鉱物
スマホマークスマートフォンに用いられる元素
 ヨーロッパ化学会版周期表はSheehan版にインスパイアされて天然元素の需要と供給に特化して作られた物で、それぞれの背景色はこのように対応してます。


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