珍味の特技
バナジウムは、1801年にメキシコの鉱山学者デル・リオにより発見されたが、のちにいったん否定されたため、1930年にスウェーデンの化学者セブストレームに再発見され命名された。 バナジウムは-3〜+5価といった多様な酸化状態をとり、それに応じて美しい多彩な発色をする事から、北欧神話の愛と美の女神バナジスにちなんで名付けられた。
バナジウムは鉄鋼に加えると生じ非常に硬く耐水性が高く、衝撃や振動にも強くなる。(バナジウム鋼) バナジウムを含む砂鉄を使った日本刀の切れ味が良いのも同様の理由である。 アメリカの自動車王フォードも当時発見されたばかりのバナジウム鋼の特徴に着目し、T型フォード(1908〜1927)のギア・サスペンジョン・スプリングなどの根幹部品に採用し、その性能を向上させてT型フォードをベストセラーにした。
意外なところでは、海にいるホヤはバナジウムを高濃度に濃縮しているのが知られている。 ホヤといっても日本の酒好きの人が好んで食するマボヤやアカボヤとはちょっと種類の違う、アスキジア科のホヤ(左切手)は、その血球には海水の1000万倍も濃縮しているというから驚きである。
太古の昔にもバナジウムを豊富に含む動植物がたくさんいたようで、原油中にもバナジウムが含まれている事がある。 その為原油をそのまま燃焼させたりすると、ガスタービンのフィンを痛める(鋼材表面の不動態皮膜を低融点化させる高温腐食現象)など厄介事が起こるため、燃料重油中のバナジウムは十分に除去するのが望ましいとされている。
またバナジウム化合物は触媒としての能力も高く、硫酸製造触媒や排ガス処理用触媒としても活用されている。