小さな変わり者
1868年の皆既日食の時の太陽コロナをロッキヤーが新しい発光スペクトル(太陽のスペクトル・フラウンホーファー線の表記に倣ってD3と命名)を観測し未知の元素があると考え、ギリシャ語の太陽「helios」にちなんでヘリウムと名付けました。発見当初は金属と予想されていたため、ヘリウムだけ語尾が希ガス特有の「-one」ではなく「-ium」となっている。19世紀末にウラン鉱から微量の不活性ガスとして分離され、その発光スペクトルが同じスペクトルを示す事が分かり地上でもヘリウムの存在が確定されました。
ヘリウムは水素の次に軽く、原子核も安定なので宇宙には大量(27.38%ちなみに最も多い水素は70.73%で二つで宇宙の殆どを構成している)に存在し、太陽などの恒星は重水素と三重水素の核融合をエネルギーの源としそれに伴いヘリウムが今も生成されています。地球上でもこの核融合を実現しようと各国で研究されていますが、実用化にはまだしばらくかかりそうです。残念ながら実用化されたのは水爆だけという悲しい事実があります。
またヘリウムは全ての物質の中で最も低い沸点(4.216K=-268.934℃)を持つ為、極低温の研究では冷媒として利用されています。また絶対0度でも常圧では液体のままで固体になりません。これは量子効果(ハイゼンベルグの不確定性原理)による物で他の物質では例がありません。また量子効果としては「超流動」現象も見られという変わった性質を示します。(私も初めて見た時なんじゃこりゃ〜?と思いました)
このヘリウム宇宙には大量にあるが、地球の大気には5.24ppmしかありません(これはほとんど放射性元素から出るα線に由来するものです)。地球上のヘリウムはウランやトリウムが壊変して生成した物だが、近年は供給不足で逼迫し値段も急騰している。(病院のMRIや研究所のNMRなどの強力な電磁石は液体ヘリウム必須なので、うちのような研究所では死活問題になってきている)
ヘリウムは水素ガスに次ぎ軽い気体で、水素と違い爆発性も無いため、現代の飛行船(数は多くありませんが)や風船(ヘリウムの供給不足に伴いこれは最近全く見かけない 例:東京ディズニーランドでは2012年11月から販売休止)の浮揚ガスとしても利用されています。かつて水素が使われた時期には爆発事故も少なく無く、ヒンデンブルグ号の悲劇などがありました。
また、無味無臭で血液への溶解度も窒素に比べても低い為、窒素をヘリウムに置き換えた比較的深海での潜水用人工空気などにも使われています。
この流用という訳でもないでしょうが、この人工空気を吸って声が変になるおもちゃがありますが、これはヘリウム中では窒素に比べ音の速度が速くなるので(分子が軽くて動きやすい事に由来)音の周波数が高音になる(ドナルドダック効果とも言うそうな)為です。
注:ただし、風船にヘリウムガスが使われてるからと言って、それを吸ってはいけません。酸素が無いので窒息します。