ポーランドの宇宙征服(?)切手の一枚です。「宇宙旅行の父」とも呼ばれるロシアの物理学者ツィオルコフスキー(1857-1935)の業績を賞しています。切手中の式はロケット推進原理を表したもので、m0はスタート時のロケットの質量、mはロケット燃料噴射後のロケットの質量、wは燃料噴射速度、lnは自然対数、vがロケットの速度増加(初速が0の場合は噴射後の速度そのものとなる)である。これは運動量保存の法則から導かれた物(理論だけでなく圧縮ガスを使った噴射実験などもやって確認)で、噴射する燃料がおおく高速である程ロケットの速度が上がる事を意味してる。この事から、ツィオルコフスキーは液体燃料の優位性や多段式ロケットの可能性にも言及している。この理論を含む彼の論文「ロケットによる宇宙空間の探求」は1903年モスクワ科学評論誌に掲載されている。
驚くべきはこの年はライト兄弟による世界初の有人動力飛行に成功した年であり、この時に既にロケットについて発表しているのはとてつもない先見の明と言えるだろう。ただし、その業績を認められはじめたのはロシア革命後の最晩年以降になってからである
追記:周期表を作った同時代のロシアの化学者メンデレーフはツィオルコフスキーを早くから評価している
毎度感心させられているマカオの科学と技術シリーズ。2020年は論理回路でした。左からNOT回路(Aでない)、AND回路(AかつB)、OR回路(AもしくはB)で、それを記号であらわすと上段の切手になります。では電気回路としてはどういう構成になってるかが下段の切手に描かれています。〇囲まれているパーツがトランジスタ(この場合はNPN型)で、左(ベース)から電圧がかけられると上(コレクタ)から下(エミッタ)へと電流が流れるようになります。ちなみに三本線はアース(電圧0ポイント)、ギザギザが抵抗を表しています。
具体的に最もシンプルなNOT回路を例に見てみましょう。Aに電圧がかかってない(off)時は、トランジスタで電流が流れることができず、+VccからSへと電流が流れます(on)。それに対しAに電圧がかかる(on)と電流はトランジスタの上から下へと流れるようになる為、Sには信号が来ません(off)。他の回路は自分でトレースして確認してみましょう!
コンピュータ・ITなどの進歩は著しいが、その根幹はここから始まっているかと思うと感慨深いですね。良心回路も? こういうのを見ると昔電子ブロックという学習玩具(おもちゃ)があったのを思い出します。
1820年にデンマークの自然科学者のエルステッドが、白金線に電流を流すと方位磁石が動く事を発見した。これが電流と磁気の関係の初めての確認であり、その功績を讃え母国からその様子をデザインした切手が出ている。(左端)この現象を定量的に評価して関係性を明らかにしたのがアンペール(他切手の御仁 電流の単位であるアンペアAはこの人の名前に由来 微妙に髪型が違うのはご愛敬)。その法則は右ねじの法則として知られ、電流の進行方向に対し反時計回りに磁場が発生する。 と言うことは、電流を円環形に流すと円に対し垂直方向に磁場ができる。ならばと電線をコイル状に巻けばコイルを貫く形で磁場が発生し、巻いた分だけ強力になる。これはソレノイドと呼ばれている。 ちなみにコイルに鉄などの強磁性体*を突っ込むと電磁石の出来上がりとなる。
なのでソレノイドの軸に対し直角に指針を貼り付けゼンマイばねを取り付けて両脇に永久磁石を配する(切手ではゼンマイばねが省略)と電流計の出来上がり。その永久磁石をソレノイドに置き換え、指針の動きを駆動する方のソレノイドに流れる電流と同期させると、磁場も電流の強弱・向きにシンクロするので原理的には交流も測れる電流計にもなる。
*:平たく言えば磁石にくっつく物質。鉄などの原子は単体で磁気を持っているが、通常はそれがある程度バラバラな向きになっており全体としては磁気を持ってない。(よって鉄同士を知被けてもくっ付かない)ところがそこに磁石を近づけるなど外部磁場をかけると、向きが整列して強力な磁石となり互いにくっつくようになる。
グスタフ・キルヒホッフと言えば化学の世界ではブンゼンと共にセシウムとルビジウムを分光学的手法で発見した人という事で有名ですが、この切手の右に書かれている式は別の業績です。これは電気回路におけるキルヒホッフの法則を表しており、上段が第一法則(電流Iに関する法則)下段が第二法則(電圧Uに関する法則)を意味しています。そのまんま書くと「回路上のある任意の節点流れ込む電流と流れ出す電流の和は0である」、「電気回路に任意の閉路をとり電圧の向きを一方向に取ったとき、閉路に沿った各素子の電圧 Ui の総和は 0 である」を式で表現しています。
丁度分かりやすい説明が、ろっとんさんの『わかりやすい高校物理の部屋』のキルヒホッフの法則のページがあるので、そちらをご参照する事をお勧めします。
この他にもキルヒホッフは黒体放射が温度のみに依存するという放射法則も発見している。 昔の科学者は多才な方が多いですね。
1800年ボルタによって初めての一次化学電池が開発されました。(電圧の単位であるV:ボルトはボルタに由来している)これはボルタの電池と呼ばれ、希硫酸に銅と亜鉛を漬けただけの電池で起電力1.1Vを得ることができる物であった。 この電気発生装置の発明により、化学分析に電気分解という新たな研究手法が追加される事となった。切手に描かれている塔みたいなものは、ボルタの電池のご先祖様・ボルタの電堆と呼ばれるもので、 「銅板(初期は銀板との説あり)/食塩水で濡らした布/亜鉛」を一つのユニットとし、これを重ね合わせて(電池の直列つなぎと同じようなもの)高い起電力を得る事に成功している。 ボルタの電池はこれを改良して作られた。
2015年はアインシュタインの一般相対性理論発表100年と言う事で各国から多くの切手が発行されました。そのなかでも秀逸だったのがこのマン島の切手。ホーキング博士の業績と一緒に難解な理論を図的に示したのもお見事ですが、その中でも注目なのは95pの「重力波」
重力波は一般相対性理論で予言されていたが、激しい発見競争が行われてきたにも関わらず、あまりに小さい(原子の10億分の1くらいの揺れ)為今まで観測されたことがなかった。2016年2月12日にようやく米カリフォルニア工科大と米マサチューセッツ工科大などの研究チームが重力波を検出したという報告がなされ大きな話題となった。
この切手の発行日は2016年7月1日なので、まさにタイムリーな切手と言えます。ちなみに切手は二つのブラックホールの衝突によって生じる重力波の様子を示しています。
追伸: 2017年ノーベル物理学賞の対象になりました!
最近めっきり目にする機会も少ない振り子ですが、ちょっと前までは振り子の振動を時間の基準測定方法として重宝がられていました。 大きなノッポの古時計 おじいさんの時計♪
この振り子同じ所を行ったり来たりするだけと思われがちですが、その振動面はゆっくりと回転してずれてゆきます。切手中央の花みたいな模様は、その時の振り子先端の軌跡を示しています。(どういう事だかよく分からない方はwikiの動画を)これは地球が自転している為に起こる現象(コリオリの力によるとも言える)で、地球上の赤道以外の場所ならどこでも観測されます。(台風の渦巻きもこれによって決まっている)
1851年にこの現象をレオン・フーコー(1819-1868)は長さ11mの振り子で公開実験を行い、逆に地球が自転している事を証明している。
マカオでは「科学技術」をテーマにしたシリーズ切手を発行しています。(2001年にはDNAの切手も出てます)今回紹介するのは2002年発行の素粒子理論を扱った切手です。6種1小型シートという力の入れようお見事です。(昨今の日本の手抜き10面シートとは出来が違う!)
三つの線にそれぞれα、β、γと書かれています。そう、これは磁場(紙面垂直方向上がN極下がS極)中の放射線の飛跡を描いたものです。α線は+2価の電荷を持つヘリウムの原子核の飛跡、β線は-1価の電荷を持つ電子の飛跡、γ線は高エネルギーの電磁波なので電荷を持ちません。
この初日記念消印カバーはずっと探してましたが、最近始めたebayで送料位の値段で手に入ってハッピー。探すのは慣れていなかったのでちょっと大変でしたが^^;
補足:α線は水1mm未満で、β線は1mm厚のアルミニウムで、γ線は1.5cm厚の鉛で放射線が遮へいできます。放射線を心配する時にはそれぞれの性質を踏まえて考えましょう。
ボイルはまた左切手に描かれてるロバート・フックが作成してくれた空気ポンプ(ゲーリケの発明品の改良版)を使い、様々な空気の研究を行った。この他にも比重と屈折の研究、流体力学の研究を行って物理学に貢献した。またボイルは錬金術師でもあったが化学も好んで研究し、アリストテレス以来支配的だった四元論を批判し(1661年刊行「懐疑的化学者」)元素の存在を認め、混合物と化合物を区別した。ここら辺が近代化学の祖と言われる所以のようである。
なお二つの切手ともにアイルランドの切手で、当地ではボイルは国の代表的科学者として崇められているようである。(でも本人は手紙でアイルランドについて「野蛮な国で、化学について誤解されてるし、化学用の器具もなかなか入手できない」とやんちゃな事も言ってたりする)
この状態方程式はこんなに単純なのに、気体-液体の相転移や臨界点の存在を表現できる優れ物です。 右切手に小さく描かれている本の右ページはそれを表した体積-圧力図です。(物理化学の教科書にもよく載ってますねぇ なお右の御仁もファン・デル・ワールス)
ファン・デル・ワールスはこの功績により1910年にノーベル物理学賞を受賞しています。
また右の北朝鮮の小型シートでは、シート右下に李升基(切手の人物)・櫻田一郎らが作った世界で二番目の合成繊維ビニロンの構造式と共に、高分子の結晶領域と非晶質領域が混在した状態が描かれています。 この描像は現在でも教科書などでもよく出ています。
なお、1991年にはピエール=ジル・ド・ジェンヌが「単純な系の秩序現象を研究するために開発された手法が、より複雑な物質、特に液晶や高分子の研究にも一般化され得ることの発見」でノーベル物理学賞を受賞しています。
不確定性原理は発表当初から量子力学者の間で激論が交わされた。 なお、アインシュタインはこの原理に反対し、「神はサイコロを振らない」という言葉を残しました。
1. 特殊相対性理論 (左下)
2. 光量子仮説 (下中央)
3. ブラウン運動の理論 (右下)
実はこの3つの理論(特殊相対性理論・光量子仮説・ブラウン運動の理論)は全て始めて1905年に発表されたものというから驚き。(故に1905年はアインシュタイン奇跡の年と呼ばれている) 脳味噌少し分けてもらいたいものだと思ってしまいます。
今回は古典物理ネタ。フーコーの振り子です。
素粒子理論 始めに言っておきますが私は(趣味で)素粒子論を勉強しようとしたけど、三度挑戦して三度とも挫折した人間です。ですので、分かる範囲で紹介させていただきます。(間違いがあるかもしれませんが、その時はお知らせ下さい)
朝永振一郎(1965年ノーベル物理学賞受賞)の確立した量子電磁気学もここに出てくる素粒子理論の基礎となってます。
放射線
切手はポーランドが出した皆さんご存知マリー・キュリーの切手(生誕100年)ですが今回の主人公は初日記念消印の方。
その為γ線は磁場の影響を受ける事無しに直進し、α線β線は進路が曲げられています。α線β線は電荷が逆なのでそれぞれ逆方向に曲がっており、β線の方が大きく曲げられています。α線は+2価なので-1価のβ線より磁場から受ける影響は大きいのですが、ヘリウム原子核と電子より重いのでその分進路の曲がりが小さくなっております。
ボイルの法則 ボイルの法則は物理化学でも始めに出てくる(皆さんも覚えているでしょう?)1661年にアイルランドの科学者ロバート・ボイルが発表した理想気体の法則の一つで、「温度が一定の場合、理想気体の体積は圧力に反比例する」というものです。(式で書けば切手にも出てるようにpV=k(定数)となります)
ファン・デル・ワールスの状態方程式 最も簡単な気体の性質を表す理想気体の状態方程式(PV=nRT)では、全圧力・温度で気体しか表現できません。 これに気体分子の排除体積b(正確には近距離での斥力)と遠距離での分子間引力aを考慮に入れただけで、なかば実験的に導いたのが左切手のファン・デル・ワールスの状態方程式。(勿論描かれてる人物はファン・デル・ワールス 背景には沸騰する液体)
高分子の相
一見すると普通のメータースタンプですが、使用機関名の枠右上と左下に模様が描かれてます。
これはマックス・プランク高分子研究所のメータースタンプで、右上が高分子の結晶性領域を、左下が非晶質領域を示しています。地味だけどいい味出してます。
不確定性原理
久しぶりのモロ物理切手、不確定性原理です。
量子力学では粒子の位置の不確かさ冫と運動量の不確かさ冪の積には切手にかかれているような限界があるという物です。(位置と運動量は正確には同時に決められない) これは、物質は粒子性と波動性の二つの性質があるためで、ハイゼンベルグの思考実験によって導かれました。(この関係は時間の不確かさ冲とエネルギーの不確かさ僞にも同等の関係が成り立つ)
「無」の力 −マルデブルグの真空実験−
玉っころを馬(少なくとも8頭以上!)が両側からめいっぱい引っ張っています。 実はこの玉は銅の半球(直径1mぐらい)を合わせたもので、中は真空なのです。 どうやらうんともすんとも動かないようです。
これはドイツのマルデブルグの市長ゲーリケが空気ポンプなる真空を作り出す道具ができたからといって、真空がどれだけすごいか調子こいて1654年皇帝の前でやったびっくり実験です。 さて実験の結果は?と言いますと、この半球は16頭の馬で引っ張ってやっと離す事ができるのに、空気を入れるといともあっさりと両手で離せたそうです。
ここで問題です。 実際どれくらいの力が掛かれば半球を引き離す事ができるでしょうか? 計算してみてください。(馬力での答えは不可!) 答えは・・・まだ暫く出さないでおきましょう。
彼はこの他にも気圧計や摩擦電気機械などを作ったりした。なかなかの発明家&物理学者だったようです。
(ただしこの道楽市長が仕事をちゃんとやっていたかどうかは定かではない)
アインシュタインの3理論
知らぬ者はいないといわれるほど有名な理論。(だが理解している者は殆どいないと言われてもいる)科学切手の世界の中で最もメジャーなアインシュタインの切手には、(うんざりするほど)ほとんどこの理論を象徴する「E = mc2」が書いてある。
相対性理論程には有名ではないが、1921年のノーベル物理学賞の対象になったのはこちら光電効果を説明するこの仮説である。切手の方も数種あり、下のように式を書いてあるものもあれば、絵で表現しているものもある。
切手の中で方眼紙の上を線がのたうち回っています。この図はブラウン運動を表しています。(現象は1827年にブラウンによって発見)ブラウン運動の理論は三つの理論の中では最もマイナーで、(私の記憶が確かなら)切手になっているのはこれともう一つくらい。お恥ずかしい話ではあるが、この切手を始めて見たとき”?”と思い調べてみて始めてこれもアインシュタインの業績だったのかと感心してしまいました。