どアホな奴等(科学切手編)

 人間誰しも間違いは犯すもの。いつまでも悔いてばかりじゃしょうがありません。 しょうがないなら、いっそのこと笑ってしまえ。というわけでそんなおちゃめ&お間抜けな切手を集めてみました。
 ただし、反省はお忘れ無く。特に受験生の諸君(見てるかな?)こんな間違いしちゃいかんよ。
ランキング
初級編: これくらいは許せるかなぁ?
中級編: ダメです。これはいけません。
上級編: だー!いかんてゆーちょろーが(日本語訳 ダメだと言ってるじゃないか!)
投稿編: 皆さんにお寄せいただいた情報で、HPで公開されているお間抜けちゃんをご紹介
問題外編: 話にもならん!何も考えてないでしょう。


初級編その1:まとめてベンゼン三部作

 発がん性物質という事で最近はめっきりお見かけしなくなったベンゼンですが、有機化学では基本で古い人は「亀の甲」などと呼んでいました。 ちょっと昔までは結構切手のデザインにも出ていたのですが、案の定変な奴もいます。ここでは初級編の始めとしてベンゼンおよびその誘導体の「バカモノ」を紹介します。

ちょっと多かねぇか ほぼ正解

1-1 ちょっと多いんじゃない?

 ←石油工業では必ずと言って良いほど出てくるという事でベンゼン(benzene C6H6)・・・・・んー、変だってばさ。

 ベンゼンは右の切手に描かれているように(厳密には突っ込み所はいろいろあるけど)、六角形の角に炭素(C)があってその先に水素(H)が付いているモノ。 略記として炭素や水素を書かないで表記する事はあっても、六角形の角はあくまで炭素。
 しかし、左の切手はそれとは別に炭素がさらにくっ付いてる。 じゃあ、そういう別の物質があるかというと・・・・・無理無理無理無理無ー理、少なくとも安定物質としては存在不可能!


フェノール?

1-2 落ち着きましょう

 六角形とOH。 御察しの良い方ならお判りでしょうが、フェノール(phenol)です。 でも水酸基(-OH)にどうも落ち着きがない。 どこかの炭素にくっついてくれー。

 これフェノールじゃなくて、シクロヘキサノール(cyclohexanol)じゃないかって? いえいえ、フェノールです。 この切手、Joseph Listerが外科手術の消毒にフェノールを使った100年を記念したものですから。 まあ、昔はベンゼン環をタダの六角形で表現していたこともあったらしいから許せるでしょう。 でも真似しちゃいけません。


アニリン?

1-3 かぶってるってばさ

 ちゃんとしたベンゼン環とNH2アニリン(aniline)です。 ほんとに。 NH2が炭素の上にふんぞり返っているというか、ベンゼン環にめり込んでるというか... でもアニリンなんです。 これまた真似しちゃいけません。

 もし、これがピリジン(pyridine)だったらすごいプロトン化(水素イオンがくっつくこと)ですね。 なんたって一つのN原子に二つも水素(+)イオンが付いてるんだから。 まさに過激分子。



CH3?

その2:何か足りないぞ

 炭素の周りに水素が3つ

何か足りないような気がする...
 そうだ!これはメチル基を上から見たところに違いない!うんそうだ。そうに違いない。
(でも、角度が違うなんて細かいことは聴けやしない。くっくっく)



上か下か?

その3:上か・下か?

 18世紀の化学のスーパーマン、ラヴォアジェさんが何やら左の方を見上げています。 見上げる先には・・・

H2O

そりゃ気にもなるでしょう。間違ってますもん。ちなみに正解は

H2O

分子内の原子数を表す数字は右下に付けましょう。(でないとテストで×くらいますよ)

昔(特にフランス語圏)は上に付ける事もあったそうです。(佐藤さん情報)そこまで考えてこのデザインにしたのならおバカなのは私の方ですね(A^^;


その4:科学切手上最大の間違い

ばーか、ばーか、百貫ばーか

 20世紀を代表する科学者として、ただでさえ多いアインシュタイン切手ですが、2000年には20世紀を締めくくるという意味合いでこれまた多数出ました。 外貨獲得のために作られた物で、そのほとんどは悪趣味かつ間抜けなデザインになっています。 そんな中のワースト1がコレ。でかでかとこう書いてあります・・・

E = mc2   もちろん正解はこちら

今まで切手でこんな間違いしでかした国は知りません。しかも、これがまたでかい。(縮小してますが、式の全長5.5cm 高さ2.5cm 並みの切手よりでかい!)

まさに前代未聞
全世界に向けて「お馬鹿」大アピール!



とねぐぅわ

その5:我が名は・・・

 ガンビアのノーベル賞100年記念の切手の一枚です。 どうやら利根川進博士(1987年ノーベル生理学医学賞受賞)のようですが、これまたよーく見てみると・・・左側に名前が書いてあるのですが

Tonegwa (とねぐぅわ)って誰だ!失礼な!

ノーベル賞100年の時はこのような科学切手の粗製濫造が横行しました。節操のないことに(99.9%)本人の承諾も得ないで。(大体本人のチェックが入ればこんな間違いはまずあり得ない)

追記: この時、ノーベル賞受賞者の江崎玲於奈博士もいくつかの切手になってましたが、よく「Leo Esaki」と書いてある。 これは愛称。 サインをする時も自分でLeoと書いていたそうな。 なかなか格好いいですね。


モナコよお前もか

その6:我が名は・・・2

 炭素14を用いた年代測定で1960年にノーベル化学賞を受賞したリビーの切手です。発行したのはモナコで、デザインも年代測定を砂時計で表現した、上品な色使いで好感が持てる切手です。

偽名  が、これまたよーく見てみると名前が「Frank Willard Libby」となっておりますが、彼の名前は「Willard Frank Libby」です。

 やたらと値段の高い切手を多種多量に乱造している国ならよくある話ですが、いかな小国とはいえモナコ公国ともあろうものがこのようなミスをしてはいけませんね。



ばーか、ばーか、九十九貫ばーか

その7:双璧

 紙上最大のおバカなアインシュタイン切手を紹介しましたがそれに匹敵するでっかい馬鹿切手がありました。

発行国は”怪しげな切手の国”の代表格、シエラレオネ。
ノーベル賞100年記念の時に出た1965年物理学賞を受賞した朝永振一郎博士を題材にした切手。

 問題はシート地、エチレン(H2C=CH2)かと思いきや・・・・・・・

炭素であるはずの黒丸にはっきりとO(酸素)の文字が!

 文字薄めですが見間違えではありません。こんな化合物存在しません。そもそも朝永博士の研究となんら関係ありません。サイズからしても先のお馬鹿アインシュタイン切手に匹敵しております。朝永博士もあの世で首を捻っていらっしゃる事でしょう。



小さいバカ小さいバカ小さいバカ見つけた

その8:だからと言って小さければ良いというものではない 

 ソ連の国力をアピールした化学肥料プラントの切手です。右下の三つの化学式(硝酸アンモニウムNH4NO3・リン酸二水素アンモニウムNH4H2PO4・塩化カリウムKcl)はそこで生産される化学肥料を表しています。

よく見てみるとちゃんと肥料の三要素:窒素N・リンP・カリウムKがそれぞれ入っています。

 ってclって何じゃらほい? これは本来塩素Clであるはずで、デザイナーがCとcが似てるので適当に描いちゃったみたいですが、これダメですw



まだまだほんの入り口、さらにディープなアホ科学切手はこちら → [To be continued]

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