核分裂

連鎖反応と原子力

パキスタン原発50年安全
 ウラン235の核分裂に伴い放出される中性子を別のウラン235原子核が取り込んで核分裂が起こると反応はドミノのように続いていくので、これを連鎖反応と呼んでいる。1つの核分裂で1つの核分裂を誘発する場合、反応は安定した速度とエネルギー放出を続ける。臨界と呼ばれるこのような状態を維持してエネルギーを取り出すのが原子力発電の基本原理である。なお、初めて臨界に達した原子炉(シカゴパイル1)フェルミらによって作られた。
日本の抗議により発行中止となったアメリカ切手転じてラベル
 それに対し、臨界点を超えて1つの核分裂が複数の核分裂を誘発するようになると、級数的に核分裂は増加し暴走し一瞬ですさまじいエネルギーを放出する。これが原子爆弾で、ウラン235を使ったものはアメリカの手で1945年8月6日広島に投下された。その威力は放射能汚染も含め筆舌に尽くしがたい悲惨なものであった。その為、今の所国際紛争等でのその投入は禁じ手と見なされている。
 ウラン235の核分裂で中性子は複数個放出されるが、天然ウランのようにウラン235密度が低いと次のウラン235に充分に吸収されず反応は連鎖できず収束する*1。 したがって、連鎖反応を起こすようにするには濃縮をしなければならない。化学的性質はウラン235と238に違いは無いので再結晶のような化学的常套手段は効果はない。そこで登場したのが核開発の最重要技術となった遠心分離法。大抵のウラン化合物は個体だが、六フッ化ウラン(UF6)の昇華点56.5℃なので、こんな重元素でも容易に気体にする事ができる。この気体を遠心分離機にかけて、より軽いウラン235を濃縮する事ができるようになった*2。 なお、原子力発電では5%程度、原爆では100%近くの濃度が要求される。
*1: ウラン235の核分裂を起こす中性子の吸収は、ウラン235の密度だけでなく中性子の速度にも依存する。高速=高エネルギーの中性子の方が良いような気がするが、実は逆で熱中性子と呼ばれる低速=低エネルギーの中性子の方が効率よく吸収される。その為原子炉には水やベリリウム材といった減速材が使われている。

*2: ウラン235濃縮の残りカスの利用法に劣化ウラン弾というのがある。ほぼウラン238である劣化ウランは非常に密度が高いため同じサイズの砲弾でも大きな破壊力(運動エネルギーは質量×速度の二乗)を生み出す。しかし劣化ウランの放射能は天然ウランより低いとは言われているが、その汚染も懸念されている。イラクから劣化ウラン弾の使用を非難した切手もあるそうだが、国が国だけに入手できてない。欲しいけど


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