ゴッホの黄色
クロムは1797年にボークランによって発見されました。名前の由来は、クロムが酸化状態(6価〜-2価)により紫、赤、黄、緑など多彩な色を示すため、ギリシャ語で「色」を表す「クロマ」にちなんで付けられました。例えば宝石で言うならエメラルドの緑色はクロムに由来しており、ルビーの赤い色もまたクロムによる発色です。
クロムは表面で薄い酸化被膜を作りそれ以上の腐食を抑える為、鉄などのメッキに用いられています。ニッケルとの合金は電気抵抗が大きいため電熱線「ニクロム線」(子供の頃、発泡スチロールとかこれで切ってました)の材料として利用されています。
また生体においては3価のクロムは、成人には場合約2mg程度存在し、糖やコレステロールの代謝に不可欠な為、必須微量元素とみなされています。
皆さんもよくご存知の物では、「ひまわり」などに見られるゴッホの好んだ黄色顔料もクロム化合物です。これは1797年に発見されたクロム酸鉛PbCrO4を主成分とするクロムイエローで、19世紀の画家たちに愛用されていました。
しかし、酸化数6価のクロムは極めて毒性が高く、取り扱いには厳重な注意を要します。この為、絵具の黄色は現在はクロムイエローが使われる事はほとんどありません。またマニアックな所ではかつて実験室でガラス器具を洗浄するのに重宝していたクロム酸混液も最近はめっきり見かける事はありません。付記:クロムはこんな化合物も作ります