汚名     アラン・チューリング(1912〜1954)
エニグマ暗号解読記念 エニグマ暗号解読機
 2013年も押し迫った12月24日、英国でエリザベス女王によってひとつの珍しい恩赦が行われたと言うニュースが流れた。恩赦されたのはアラン・チューリング。罪状は同性愛(イギリスでは1967年まで違法だった)
チューリングの履歴書
 アラン・チューリングと言えば「現代計算機科学」「人工知能の父」として知られる天才的な数学者である。また第二次大戦のナチスドイツ軍のUボートでも使用されていた暗号「エグニマ」を解読するのに貢献し大戦の早期終結の立役者でもある。しかし、生前にはその業績にふさわしい待遇を受けていたとは言い難かった。。。
  なぜなら、エグニマ解読の仕事は軍機密で1974年まで非公開であった為、生前にその栄誉を一般に讃えられる事は無かった。また、1952年に同性愛の罪で「化学的去勢」(性欲を抑えると当時考えられていた女性ホルモン注射の投与)を条件とした保護観察処分を受けた。その結果、政府通信本部(情報収集・暗号解読業務を担当するイギリスの諜報機関)のコンサルタントも辞めざるを得なくなっている。さらに1954年に41歳の若さで青酸自殺(検視官見解)している。
 没後、その多大な貢献ゆえに名誉回復を求めて著名人(宇宙物理学者スティーブン・ホーキングなど)による恩赦嘆願や署名キャンペーンが続けられ、今回の恩赦となったようである。通常の恩赦は対象が実際には無実であったこと、さらに遺族など名誉回復に大きな利害のある人物からの求めでなければ与えらないが、チューリングの恩赦はどちらにも該当せず、非常に珍しい例となっている。
おまけ1:身近な所では、チューリングは当時存在しなかったチェスのプログラムを書いたりもしている。ただし当時のコンピュータの性能は低すぎたので、自分でシミュレートしている。ただし一手打つのに30分もかかり、あまり強くも無かったようである。

おまけ2:また数学の観点から、1960年代に発見されたBelousov-Zhabotinsky反応のような振動する化学反応も予言している。
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