輝安鉱 |
すっぴん(?)のクレオパトラ |
アイシャドウから活字そして工芸品まで
アンチモンの歴史は古く、硫化物である輝安鉱はかのクレオパトラも黒いアイシャドーに使っていたという説もあるくらいである。また、日本最古(683年頃)の貨幣・富本銭も銅にアンチモンが添加されて鋳造されている。元素名は、単体で見つかる事が稀である事からギリシャ語の「孤独-嫌い」(anti-monos)に由来している。(諸説あり) また、元素記号のSbはラテン語の輝安鉱(Stibium)に由来している。元素記号と元素名が全く違うので受験生にとっては悩ましい所である。(日本語読みと違って英語読みだとアンチモニーで、後に説明する合金でできている工芸品の名前と同じなので、さらに混沌の渦に叩き込まれることとなる)
アンチモンはヒ素と同族で半金属なので、アンチモン化インジウムやアンチモン化ガリウムなど半導体の原料になる。 酸化アンチモンはプラスティック・繊維・紙・ゴムなどに添加して燃えにくくする事ができるので、難燃性のカーテンやカーペット等に利用される事が多い。
またアンチモンと鉛とスズの合金(約15:80:5)は融点が低く凝固時の体積収縮が小さいので、今ではすっかり見なくなったが活字の材料に使用されていた。
これに近い組成の合金は、東京の伝統(明治初期〜)工芸品「アンチモニー」の素材として利用されている。これは、しっかりとした重さがありながら表面が美しくメッキがしやすいためであり、トロフィーやオルゴールなどの装飾品に使われている。 一時金メダルを噛むのが流行していたが、アンチモンはヒ素程ではないが毒性があるので、「アンチモニー」にメッキを施した金メダルは噛まない方が賢明なようである。