キログラム原器卒業します!
イリジウムは1803年にイギリス人化学者テナントにより発見されている。元素名は、その化合物によりいろんな色を示す事から、ギリシャ神話の虹の女神イリスにちなんで名付けられた。イリジウム単体は、金をも溶かす熱王水(濃塩酸と濃硝酸を3:1の体積比で混合物を熱した物。 大抵の金属はこれで溶ける)にもほとんど溶けないほど耐腐食性が高く、硬い金属である。
メートルやキログラムの基準であった原器(日本ではどちらもうちの研究所(産業技術総合研究所)所蔵)は、90%は白金だが残りの10%はイリジウムの合金である。
キログラム原器としては、密度が高く(→表面積が小さく空気に触れにくい)非腐食性の観点では白金100%でも良いが、白金だけだと柔らかく傷つき易く質量の変動が起こりうるため、イリジウムを混ぜて硬度を増している。ただしイリジウム含有量が多すぎると脆くなるので、10%が落としどころだったようである。このキログラム原器はつい最近まで現役でしたが、やっと2019年5月20日に定義が変更になりました。そこでもうちの研究所が深くかかわっており、その経緯について分かりやすく解説しているので見てね。^^(メートル単位の推移についてはクリプトンで) なお、うちの研究所に安置されているキログラム原器は2022年には重要文化財に指定されました。