「ステロイド」というとそれだけで悪役のように見られ、 人によっては(マスコミあたりで言われるところの)化学物質(←馬鹿丸出しのネーミングで恥ずかしい せめて人工合成物質とでも言って!)と勘違いしているようですが、基本的に天然物です。 まあ、微量でも効果が大きいケースが多く、使い方を間違えれば酷い目にあうので、用心に越したことはありませんが。さて、ステロイドというのは「ステロール類似の化合物」という意味で、右切手の緑の線でしめされるような骨格を持つものです。 (健康番組で目の仇にされているコレステロールもこの一派) このステロイド骨格にちょっと違うオマケ(官能基)が付いただけで、性質や生体への働きはゴロッと変わってしまいます。(ある時は薬物、ある時は毒物・・・・) こういうちょっとした違いを上手く利用している生体システムの絶妙・玄妙・時には奇妙さには全く驚かされるばかりです。
←さてそのステロイドの一例がコレ。 ストレスホルモン = コルチコイドホルモン(ちょっと構造が違うようだけど) 同じステロイド骨格(右上と六角形の形が違うように描かれているけどどちらもシクロヘキサン環)があるのが判ります。
このホルモンはストレスが貯まると増大し体と精神に機能異常を起こします。 何て書くと、単純に悪玉のようにも思われがちだが、生体には必須のホルモンでもあります。(「過ぎたるは尚及ばざるが如し」ってところ) まあ、ストレス反応というのも一種の防御・警報システムのようなモノでもあるので、無いとそれも困りますしね。
この他にも、多くのホルモン(例:男性ホルモン・テストステロン)、生物由来薬物・毒物、抗生物質などにしばしば出てきます。
あ、申し遅れましたが、この頭痛そうにしているおじさんはストレス理論の提唱者ハンス・セリエ(1907-1982)です。
おまけ: ストレス切手の赤線グラフは約60年前セリエが提唱したもので、ストレスが加わった時の体の抵抗力の状態(抽象的なグラフですが)を示し、下記の表のように大きく3つの時期に分かれています。 ちなみに横軸は時間で、細い水平線は通常の抵抗力を示しています。
A: 警告反応期 ストレスに直面した直後のため、すぐには体が対応できず抵抗力が一時的に低下した後、対抗できる抵抗力を発現していく・・・ B: 抵抗期 ストレスと抵抗力が拮抗した状態。 ハイテンションで根競べ。 ストレスの方が先に撤退してくれれば良いが・・・ C: 疲はい期 持続するストレスに抗しきれず、抵抗力の持続力が限界に達し、体の機能が低下し・・・やがては死亡
ストレス切手(?)の構造式に関する情報を石川県の薬剤師・川島秀樹様と岐阜県の川地様から、グラフに関する情報を化学切手収集家の大先輩佐藤様から頂きました。 ありがとうございました m(_ _)m